いつかの君と握手

「それって時間になったらみずぼらしくなるんじゃないっすか!?
いや、この際そんなの関係ないや。お願いします! イノリ、乗れ!」

「は?」

「あ、これみーちゃんの傘だろ? そっちに転がってた、はい。で、手、貸しな」

「ありがと、三津! 柚葉さんによろしくって言っておいてね!?」


三津の手を借りて、どうにかトマトパスタに乗車。
さっきと同じく(9年前になるのだけど)スピードを上げる加賀父に、再び全ての希望を託した。


雨上がりの駅前広場には、今回はたくさんの学校関係者がいた。
あたしたち同様、遅刻寸前の生徒が荷物を持って走っている姿もちらほらとある。


「ついたよー」

「ありがとうございます!」

「行ってらっしゃーい」

「ほら、行くぞ、イノリ」


広場横の道路に横付けした車から、イノリを押し出してから、自分も降りた。


「じゃあ、帰ったらまた! って、痛え……っ!」


考えなしに、車から降りてしまった。
足首に激痛が走って、ついうずくまってしまう。
うっかりしてた、挫いてたんだった。

湿布は貼ったけど、すぐに痛みが引くわけじゃないもんなー。


「あ、そうか。祈、美弥緒ちゃん、足挫いてるんだ」

「は?」


車内から、加賀父が思い出したように言った。


「なんでオヤジがこいつの怪我のことなんか知ってんの」

「何ででも、知ってるの。結構腫れてたはずだから、ちゃんと面倒みてやれよ」

「え!? あ、いや別に平気ですから」


まあ、ゆっくり歩けば問題ないだろ。
挫いたあともイノリをおぶって歩けてたんだし、どうにかなるよね。
あとで保健係からテーピングもらって固定しとこうっと。

えーと、うちの班の保健係って誰だっけなー。琴音だっけ?


「ん? なんだ、おい」


よいしょ、と立ち上がろうとしたら、目の前に背中が現れた。
あたしの旅行バッグが腕にかけられている。


「乗れ」


背中を向けたイノリがぶっきらぼうに言った。


「は?」

「乗れって」


は?
おぶされってこと?
あたしが、イノリに?