いつかの君と握手

「旅行、行くの? 確かみーちゃんってほとんど寝てないはずだよね。休んじゃえば?」

「無理! あたし班長だし、サボれないっす」

「真面目だなー。偉い偉い。それならオレも弁当作ってやればよかったな」


三津がぽんぽんと頭を撫でる。


「三津のご飯、美味しかったもんね。また作ってくれると嬉しいなあ。
……って、これ加賀父の手作りですかっ!?」


聞き流した言葉の重要性に、遅ればせながら気付いた。
加賀父の手作りなんて、もったいなくて食べられない!
でも確かに、あたしのお弁当は既に無いんだった。
と、とりあえず記念に写メ撮っておこう。

それに、Tシャツも正直ありがたいー。
結構薄汚れてるんだよね、今着てるやつ。
森を徘徊し、雨に濡れた上、さっきは濡れたアスファルトの上でスライディングしちゃったしね。着替えたかったんだよね。


「何から何まですみません」

「いいんだよ、俺がしたかったんだし。何より、君に会いたかっただけだしね」

「ひゃ!」


にっこりと殺人的なセリフを吐かないでー。
そのフェロモン、余裕で死ねますんで、あたし。


「俺、弁当なんて食ってねえよ?」


祈が不服そうに言った。
加賀父がぶう、と膨れた顔に肩を竦める。


「それは、これから美弥緒ちゃんに直接聞くといい。祈がずっと知りたがっていた、あの時の真相が分かるよ」


そうか、やっぱりもう話していいのか。
しかし、どこから話したらいいものか。
イノリは酷く怒ってるし。

うーん、順序立てて話すほうがいいのかなー。


「なんだよ、それ」

「聞けば分かるよ。美弥緒ちゃん、とりあえず、再会の時間はまた今度にしようか。
集合時間、あるんだろう?」

「集合時間? ……だあああああぁああぁぁぁぁああ!?」

今何時だ!?


「現在、8時18分でっす」


腕時計に目を落とした三津がのほほんと言った。

完全に班長の集合時間過ぎてる……。
つーか、一般生徒の集合時間にも、危うい。


「イノリ! あたしたち遅刻するぞ!」

「んあ? 別に少しくらい平気だろ」

「平気じゃねえ! あたし、班長だし!」


つーか、9年の間ですっかりかわいらしさ失ってんな!
真っ青になったあたしに、加賀父がトマトパスタのドアを開けた。


「送りましょうか、シンデレラ?」