いつかの君と握手

少し怯んだあたしに対し、9年後の三津はやっぱり大人だった。


「仕方ないんだって。そうしなきゃ、オマエは二度とオマエの『ミャオ』に会えなかったかもしれないんだからさ。
ずっと会いたかったんだろ?」

「意味わかんない言い方でごまかしてねえ? 三津さんの言ってること、わかんねー」

「それはこれから、みーちゃんに訊いてみな? きっと驚くような話をしてくれるからさ」

「は? 今でも充分驚いてるんですけど」


思えば、今までイノリの視線は全て殺光線で撃退してきたからな、あたし。
知らんもんは知らんと突っぱねてきたもんな。
なのに急にこんな風に態度を変えたらムカつくよなあ。


「なあ、もしかしてオヤジたちもグル? 加賀の方が、最近怪しかったんだけど」

「っ!?」


……あのかわいかったイノリが加賀父をオヤジ呼ばわり、だと……?
ちょっと、止めてよー。かわいく『父さん』って言ってよー。


「へえ、一心さん、祈に何て言ってたんだ?」

「もうすぐだとか、ようやくとか、そんな感じのこと言ってた。
あと、親睦旅行について、色々うるさかったかな。早く家を出るように、とか」


ふうん、親子仲が悪いわけじゃないみたいだ。
よかった。ぎこちなくなってたりはしてないみたい。
思いあってる親子なんだから、仲良しでいてもらいたいもんね。


「うわ、オレたちにはみーちゃん関連の話は禁止してたくせに、ひでえ。
つーか、あの人もここに来てんじゃねーの?」

「はあ? なんで加賀のオヤジが来るんだよ……って!?」


きょろきょろする三津に倣ってイノリが視線を遠くへやり、唖然とした表情を浮かべた。

何だ? と、視線を追うまでもなく、気付いた。
さっきまで聞いてたはずの爆音。
もしかして、と見ればやはり黒く平べったい車がこちらへ向かってきていた。


「な!? オヤジ!?」

「あ! トマトパスタ!」


声を上げたあたしに、イノリが不審な顔を向ける。


「オヤジの車、知ってんだ?」

「へ? え、ええと、乗った、からかな?」


かわいくないのを承知で、てへ? と首を傾げてみた。


「へえ。色々ご存知なんデスネ」


はい、思いっきり舌打ちされました。
つか、イノリが舌打ち!?
イノリがそんな真似するなんて!
軽くショックを受ける。


「おお、無事帰って来てる! よかったー。なんだ、三津もやっぱり来たのか」


バス停に横付けしたトマトパスタの窓から、加賀父が顔を出した。


「当たり前っすよ。この日が来るの、結構楽しみだったんす」

「俺も。ここ数日、楽しみで仕方なくてさー」


はは、と軽やかに笑うお姿にときめく。