「……確かに、そうかもしれないです、ね」
納得して、頷いた。
「だろ? そういう思い出は適当なところに放っておいて、美弥緒ちゃんの価値を認められる男を見つけて、そいつの言葉を信じることが、大事だよ。
それに、経験不足の中坊より、俺の言葉の方が信憑性が高いと思わないか」
自信たっぷりに言う加賀父に、思わず笑いが零れた。
「へへ、すんごい自信ですね。でも確かに、加賀父を信じたくなりますね」
「だろ? 信じてなよ」
大人の余裕、経験豊富、とかいう単語が頭に浮かんだ。
加賀父はあたしの些細な、でも結構固いコンプレックスの塊に、あっさりとヒビを入れてくれたのだ。
「さ、というわけで少し眠りなさい。ね?」
「は、はい」
子どもじみた悩みを口にしてしまったという気恥ずかしさから、これ以上加賀父と話すのが躊躇われた。
とりあえず目を瞑ってごまかしてしまえ! とあたしはぎゅうと目を閉じた。
「おやすみ、美弥緒ちゃん」
さらりと髪を梳くようになでられて、こりゃもう絶対に目を開けらんねえ、と思う。
とにかく意識をそらせ! と鳴沢様名場面集(美弥緒セレクション)を回想し始めたら、いつの間にか眠りに落ちていた。
「――――美弥緒ちゃん、美弥緒ちゃん」
夢の中で、金吾様が呼んでいた。
月代も青々とした、や組の半被姿が麗しい金吾様だ。
一面のひまわり畑の中で、すごく優しく、繰り返し名前を呼んでいる。
ふと自分の体を見下ろしてみれば、町娘のような着物を着ている。
髪に手をやれば、綺麗に結い上げられており、簪なんぞも刺さっている様子。
なんだ、この夢。一生目覚めるなっていう神サマからのサイン?
「美弥緒ちゃん!」
よく分からんが、金吾様が呼んでいる。
これは行かずしてどうする。
はーい。今すぐ参りますう。
アハハ☆ と駆け出すあたし。
金吾様捕まえた、なんちて。
と、金吾様にがっしと肩をつかまれた。
いやん、情熱的、と思った瞬間、ぶんぶんと揺らされる。
ちょ。乱暴すぎ!
いやそういう強引さもいいけど!
「美弥緒ちゃん!」
「……あ、はひ?」
肩を揺らされて目が覚めた。
月代などない、加賀父の横顔がそこにあった。
目をこすりながら起きたあたしにちらりと視線を寄越す。
「もうすぐつくけど、君がバッグを入れたコインロッカーはどこ?」
「へ? こいんろっかー? って、は……ああああ! もうこんなところ!?」
納得して、頷いた。
「だろ? そういう思い出は適当なところに放っておいて、美弥緒ちゃんの価値を認められる男を見つけて、そいつの言葉を信じることが、大事だよ。
それに、経験不足の中坊より、俺の言葉の方が信憑性が高いと思わないか」
自信たっぷりに言う加賀父に、思わず笑いが零れた。
「へへ、すんごい自信ですね。でも確かに、加賀父を信じたくなりますね」
「だろ? 信じてなよ」
大人の余裕、経験豊富、とかいう単語が頭に浮かんだ。
加賀父はあたしの些細な、でも結構固いコンプレックスの塊に、あっさりとヒビを入れてくれたのだ。
「さ、というわけで少し眠りなさい。ね?」
「は、はい」
子どもじみた悩みを口にしてしまったという気恥ずかしさから、これ以上加賀父と話すのが躊躇われた。
とりあえず目を瞑ってごまかしてしまえ! とあたしはぎゅうと目を閉じた。
「おやすみ、美弥緒ちゃん」
さらりと髪を梳くようになでられて、こりゃもう絶対に目を開けらんねえ、と思う。
とにかく意識をそらせ! と鳴沢様名場面集(美弥緒セレクション)を回想し始めたら、いつの間にか眠りに落ちていた。
「――――美弥緒ちゃん、美弥緒ちゃん」
夢の中で、金吾様が呼んでいた。
月代も青々とした、や組の半被姿が麗しい金吾様だ。
一面のひまわり畑の中で、すごく優しく、繰り返し名前を呼んでいる。
ふと自分の体を見下ろしてみれば、町娘のような着物を着ている。
髪に手をやれば、綺麗に結い上げられており、簪なんぞも刺さっている様子。
なんだ、この夢。一生目覚めるなっていう神サマからのサイン?
「美弥緒ちゃん!」
よく分からんが、金吾様が呼んでいる。
これは行かずしてどうする。
はーい。今すぐ参りますう。
アハハ☆ と駆け出すあたし。
金吾様捕まえた、なんちて。
と、金吾様にがっしと肩をつかまれた。
いやん、情熱的、と思った瞬間、ぶんぶんと揺らされる。
ちょ。乱暴すぎ!
いやそういう強引さもいいけど!
「美弥緒ちゃん!」
「……あ、はひ?」
肩を揺らされて目が覚めた。
月代などない、加賀父の横顔がそこにあった。
目をこすりながら起きたあたしにちらりと視線を寄越す。
「もうすぐつくけど、君がバッグを入れたコインロッカーはどこ?」
「へ? こいんろっかー? って、は……ああああ! もうこんなところ!?」



