いつかの君と握手

車体の名前だということと、加賀父の所有物だということは把握した。
しかし名前はいまいち覚えられない。
トマトパスタ? まあそんな感じだよな。


つか、加賀父って、こんな車に乗るの?
ひゃー、意外すぎ。


「あ、一心さん! 用意できてるっす」


聞いたことのない声がして、三津の肩越しに見たらば、外灯の光の向こうから黒髪ドレッドヘアの男が現れた。
黒の上下のジャージに、健康サンダル。
耳にはたくさんのピアス。
タバコを挟んでいる手の甲には、黒々とした龍のタトゥがコンニチワ。

うひゃ。怖そうなオニーサンだ。
孝三たちとはジャンル違いというか。


「サンキュ。悪いな、お前たちにも色々迷惑かけた」

「いいっすよ、そんなの! 一心さんの頼みならオレたちはすぐ動きますんで!」


いかつい見た目とは裏腹に、オニーサンはニコニコと愛想よく笑った。


「この礼は必ずするから。みんなにもそう伝えてくれよ」

「その言葉だけで嬉しいっす。あ、でも飲み会くらい顔出してくださいよ。みんな一心さんの武勇伝聞くの、好きなんす」


ほうほう、武勇伝とな。
昔はやんちゃしたんだよなー、とかそういうやつだろうか。
あたしも聞いてみたいー。


「ほら、みーちゃん、乗れ」


車の真横で、三津に下ろされた。
地面に足をつくと、ずきりと痛む。

ぬう、少し酷使してしまったか。


「祈も乗れ。時間がない」


あたしの横で、イノリが同じように下ろされていた。
ほれほれ、と追い立てられるように後部座席に追いやられるイノリ。


「みーちゃんは助手席な。足、伸ばしてな」

「は、はい」


妙にフィットするシートに身を埋め、三津を見上げた。
灯りに照らされた三津が、少しだけ寂しそうに笑った。


「これから、風間さんが連れてってくれる。オレの車じゃついていけないから、ここでお別れだな」

「え!?」


「風間さんなら、絶対に間に合わせてくれるさ。そんな心配そうな顔すんなって」

「ち、ちが」



心配とかそんなんじゃなくて!
ここでお別れなの!?