いつかの君と握手

なるほど。
イノリ、日にち、場所、ね。


「ということは……明日の7時45分前後、K駅前通りのバス停に、イノリと一緒にいれば」

「戻れるんじゃないかなー、もしかしたら」


気負ったあたしに対し、のほほんとした返事。
すんまっせーん。もう少し期待できそうな言い方に変えてもらえませんかー。

眉尻を下げたあたしを見て、加賀父がくすくす笑う。


「そんな顔しない。大丈夫だよ、きっと。それに、もしそれで戻れなかったとしても、俺が必ず帰してあげるから」

「ありがと、ございます……」


この人ならきっと大丈夫だろう。
確信めいたものを感じて、ぺこんと頭を下げた。


「しかしなー。9年後の祈はかっこよくなってるのかー」


楽しそうに加賀父が言った。


「さっきの大澤父によく似てますよ。クラスの女の子の視線独り占め! って感じでした」

「あー、オヤジそっくりだな。あいつもそうだったよ。何してもきゃーきゃー言われんだよな」

「加賀父もでしょう?」

「俺? それがさー、何故だかイカツイお兄ちゃんたちに人気が高くてさー。女の子が怖がって近寄ってくれなかった」


残念そうに言う加賀父だが、確実にモテていたことは言わなくとも分かる。


「イカツイお兄ちゃんって、ヤンキーみたいなものですか?」

「そんな感じ。あいつらのお陰で中学時代はよく織部先生に殴られた」

「え? じゃああの人、中学校の先生なんですか?」

「そうだよ。ついでに言うと、今骨折で入院してる俺のオヤジの友達」


はー。そういうことかー。
あの酔っ払いが先生ねえ。


「一心……、味噌汁作ってくれー、味噌汁……」


ガタンと襖の開く音がして、話の人物が顔を出した。
二日酔いなのだろうか、頭に手をあてて、生気のない顔をしている。


「もう作ってますよ。ネギたっぷりのやつ」

「すまんなー。昨日は少し飲みすぎた……」

「俺が止めても飲むんだから。今日は休肝日にしたほうがいいですよ」

「おー……。しかし、変な夢をみ、」


加賀父が立ち上がって台所へ向かう。
のそのそと部屋に入ってきたじいさんが、縁側に残されたあたしに視線を寄越した。

途端、その目が大きく開かれる。

ぬわ! ヤバい!


「し、ししししししし志津子ぉ!?」


叫んで、またもや腰を抜かしたじいさん。
あわあわとあたしに指を向ける様子は、昨日と全く一緒。酒、抜けてねーな。