いつかの君と握手

機能停止。

あれ。あたし、すでに天国に召されちゃった?
金吾様に口説きたいとかそんな滅相もない恐れ多いことを言われるなんて、現世ではありえない。
アリエナイ、アリエナーイ。


「美弥緒ちゃん? どうしたの?」


ああ、これってあたしの願望なの?
金吾様にこんなに顔を寄せられて……。

いやでもあたしの心は鳴沢様にあったはず。
やだ、もしかしてあたしって尻軽女だったの!?


無意識にぎゅうう、と両手を握り締めていた。
と、ぐしゃりと何かを潰した。

ぐしゃり? とみれば、それはイノリの描いた絵。


「ぎゃ! ヤバい! シワになっちゃった!」


慌てて広げてシワを伸ばす。
幸いどこも破れておらずにほっとする。


「そうだ。そろそろ、美弥緒ちゃんの話をしてもいい?」


「へ? あたしの話?」


ぐいぐいと紙のシワを伸ばしていると、加賀父が言った。
はて、と一瞬考えて、思い出す。


「あ、はい! そうだ、あたしの帰る方法! 分かりますか!?」


イノリのことで頭いっぱいで、すっかり頭の隅っこに追いやってた。
そろそろ本気で帰る方法を考えなくては。


「うーん。どうかなー。とりあえず、きみの口から説明してもらってもかまわない?」

「はい!」


説明くらい、何度でも致します!
三津たちにしたように、思い出せることは全て攫って、なるべく丁寧に話をした。

加賀父は、ふむ、とかほうほう、とか時折相槌をいれつつ、聞いてくれた。


「で、今に至るというわけなんです、が」


話し終わって、どうでしょう? と加賀父を窺った。
ふうむ、と腕組みをした加賀父は、少し考えたのち、


「戻れるんじゃないかな」


とあっさり答えた。


「マママママママ、マジですか!?」

「マジ、です。戻れるよ、きっと」

よかったー。
本当によかったー。

ほっと胸を撫で下ろす。

こうして何事もなくこちらの時代で朝を迎えてしまったし、もしかしたら戻れないんじゃないか、とか考えないわけでもなかったのだ。
朝起きたら自分のベッドの上で、あら、あれは夢だったのかしら、とかそういう期待もしてたのに、見事裏切られちゃったしね。

「美弥緒ちゃんの周りの空気ってさ、この世界のものじゃないんだよ。最初見たときに違和感を覚えたんだけど、多分、9年後の世界の空気なんだろうね」