いつかの君と握手

気付けば三津は胡坐をかいており、テーブルに置いてあった柿ピーをぼりぼり食べていた。
こいつ、馴染むの早すぎ。


「みーちゃん? ああ、彼女のこと?」


加賀父があたしを見る。


「うっす。みーちゃんは祈のオンナっすから。なあ、祈?」

「な!?」


ナニ言ってんだ、と口を開こうとしたより早く、


「そうだよ」


とイノリがはっきりと言った。加賀父が目を丸くする。


「えーと、祈。美弥緒ちゃんのこと、好きなのか?」

「うん」


さっきの会話の名残があるのか顔をしかめていたけれど、はっきりと頷くイノリ。


「え、と。あのですね、これはその」


ええー。なんであたしがしどろもどろになるのー。
でもここは何か言わなくちゃだよなあ。

もたもたと意味のない言葉を吐くあたしに、加賀父がくすくすと笑った。


「そうか、いや、これは随分早いな。祈、この子はおまえの彼女でいいのか?」

「カノジョ……いやあたしはカノジョじゃ」

「そうじゃないっすかねー。手ぇ出したら風間さんでもヤバいっすよ」


三津は黙って柿ピー食ってろ。
んでもって喉に詰めやがれ。


「どうなんだ、祈?」

「うん。父さんでもだめ」


イノリの言葉に加賀父は大声で笑った。


「そうかそうか。わかった。彼女に手はだしません」


笑いの波が引かないのか、肩を震わせて加賀父は部屋を出ていった。


「ちょ、イノリ。あんなこと父ちゃんに言ったら」

「だってほんとうだもん」


ようやく目の前の湯のみに手をのばし、細い喉をならして飲むイノリ。
その平然とした様子に言葉が見つからないあたしを見て、柚葉さんがあははは、と楽しそうに笑った。


「よかったじゃない、みーちゃん。この子は将来有望だし、今のうちに青田買いしときなよ」

「柚葉、エロババアみたいな言い方すんなよなー。でも確かに、こいつはオススメだな。今のうちに既成事実作っとけよ、みーちゃん」

「ちょ! 三津のほうがエロオヤジくせーし! つーか、小学生と既成事実ってなんすか!」

「えー、みーちゃんの想像通りぃ?」

「やだ、みーちゃんってばやーらしーい」