危険な瞳に恋してる

「まあ、紫音ちゃんたら、怖い顔~~。
 紫音ちゃんが、春陽ちゃんを縛ったんでしょう……?
 ウチの裏方を手伝ってくれるなら、紫音ちゃんの条件にも合うし。
 あたしが入ってもらったのよ?」

 薫ちゃんの、にこにこっ、という笑顔に、ちょっとは、怒りの先がそれてくれたみたいだった。

 少し冷静になった紫音が、咽の奥で唸るように言った。

「……守屋から、どこまで話を聞いて……?
 薫が守屋のバイトを勝手に決めたのか?」

「そうよ。
 だって、ダーク・クラウンの人事は、あたしの裁量で決めて良いんでしょう?」

 薫ちゃんは、笑って片目を瞑り……

 ……『男』の顔をして、紫音をぐぃ、と睨んだ。

「……俺は、お前に。
 陽の当たる場所に連れ出して貰ったから……今度は、俺が。
 お前を、闇から引き剥がしてやる」

 薫ちゃんの声に合った、低音の囁く口調に。

 本当の顔はこっちだってコトが判る。

 彼もまた。

 何かの理由で『仮面』を被っているみたいだった。



 ……どきどき、する。


 薫ちゃんの強い口調と。



 そして。

 もう一つ。

 気がついてしまったコトに驚いて。

 わたしの心臓が、跳ねた。