危険な瞳に恋してる

「自分のコトを棚に上げて、言うのも何だけど。
 紫音ちゃん……本当は。
 精神的に……弱いところがあるから……春陽ちゃんみたいに、フツーの女の子が……
 紫音ちゃんだけを好きになってくれる、女の子が側に居てくれると、スゴくあたしも安心なのよね」

 紫音が弱い……?

 今度は。

 わたしは、薫ちゃんの言っていることが信じられなかった。

 実際に腕力に訴える喧嘩が強いかは、知らない。

 だけど、紫音は。

 どんな喧嘩にも、負けないイメージがある。

 口先で。

 または、お金を使って。

 瞳に強い光をたたえて、勝ちに行く。

 そんな感じだったから。

 わたしがびっくりしていると。

 薫ちゃんは、ふふっと微笑んだ。

「……ごめんなさい。
 今の、忘れて?
 紫音ちゃんは……
 やっぱり。
 強くてカッコいい方が、良いわよね?」

 でも。

 そう言っている時の薫ちゃんの顔が悲しく見えて。

 もっとちゃんと聞こうとしたとき。

 がちゃっと音がして、扉が開いた。





 ……紫音が、部屋に入って来た音だった。