わたしが全部話すと。

 薫ちゃんは、驚いたようにため息をついた。

「……それって、アノ、紫音ちゃんのことよね?」

「……うん」

「信じられないわ。
 女の子の扱いに、あんなに慣れたヒトが、春陽ちゃんをそんな風に泣かせるなんて」

 うなづきながら。

 薫ちゃんと同じような反応をしたヒトが、他にいたコトを思い出した。

 柴田、だ。

 柴田に、村崎先生のコトを言ったら。

 今の薫ちゃんと同じような顔をして……信じられないって。

 わたしも。

 村崎先生がホストだってことを知った時、すごく驚いたけれど……

 どっちか片方の顔しか知らないヒト達が、口をそろえて同じコトを言うなんて。

 まるで。

 村崎先生が……紫音が。

 驚くほどに短期間で、変わっていっているようだった。 

 今まで、完璧に分けられていた『役』が混ざってゆくみたいに。

「……それで、春陽ちゃんは、バイト先を探しているわけね?」

「そう、なんです」

 いつも、にこにこ笑顔の薫ちゃんが、ちょっとだけ真面目な顔をした。

「……じゃあ、どうせなら、ウチでバイトしない……?」