「待て。
 そいつのマクは、オレが買う」


 静かな。

 でも良く通る声が、薄汚れた路地裏に響いた。

 見れば、一人の男の人がネオンの光を背負って立っていた。

 顔は、逆光になっていて判らない。

 けれど、このスケベオジサンよりも大分若そうだった。





 ……でも。




 マ……マママ……マクってアノ……膜のこと?


 言っている事が、スゴく下品だ。

 驚いているうちにその人は、ずかずかと路地裏に入ってきた。

 そして。

 わたしのポケットに入っているお札をつかむと……





 ぽい、と、無造作に投げ捨てた。




 ばさ ばさ ばさ



 十枚の一万円札が。

 夜風に乗って路地裏ばらまかれた。

「な、何をするんだ!」

 色をなしてスゴんだオジサンに、彼は、持っていたセカンドバックから分厚いお札の束を取り出した。

 そして。

 オジサンに見せびらかすように振ると、今まで、十万円が入っていた私のポケットにそれを押し込んだ。




「……オレは、こいつの処女膜に、百万出す」