……!

 わたしだけじゃない。

 さすがの村崎先生も、その気配に一瞬、身を固くする。

 わたし達の居る場所は、準備室の隣り、資料室のさらに奥だった。

 よほど、覗き込まないと見えない場所にいた。

 だけど。

 ……見られてしまったら、おしまいだった。

 服を乱され……

 息を上げ……

 きっと、顔も火照っている……

 そんな姿を他の誰かに見られてしまったら。

 今までの、本能を揺さぶるような、震えじゃない。

 顔から火を噴くような恥ずかしさが、却って身体の熱を、押し下げ……震える。

 でも。

 村崎先生は。

 すぐに動揺から立ち直った。

 服の下に入れていた手を抜くと、片手で器用にわたしの服の乱れをざっと直して……

 ……服の上から改めて抱きしめた。

「……いいか?
 もし、誰か入って来ても、オレがなんとかしてやる。
 ……だから、騒ぐなよ?」

 耳元で囁くその声に。

 わたしが、うんうんと頷くと。

 先生は、ようやく、わたしの口を塞いでいた手を離した。

「よし。
 いいこだ……」

 先生は囁くと、その手も使って、両腕でわたしを抱きしめた。



 まるで。



 全ての災いから守ってくれるかのように。