「さ、さあ。
 お前は俺が買ったんだからな!
 痛くはしない!
 約束するから……!」

「い……や……!」

「なんだったら、イイ薬を分けてやるよ!
 合法ドラッグのアレクサンドライトって言うんだ。
 コレを飲めば、いい気分で、初めてだってイけるぞ!
 俺が、女の幸せって奴を教えてやる!」

「や……だ!」
 
 オジサンは、構わずわたしのブラウスの中に手を突っ込んできた。

 夜でも……普通の道端なのに……!

 彼は、わたしのフロントホックのブラを片手で器用に外すと、直接胸に触わりながらぐいぐいと背中を押した。

「あっ……や……だ……!」

 このまま。

 このまま……

 ホテルにさえにも行かず、すぐそこの路地の暗がりで、されてしまいそうだった。



 怖い……怖い!



 通行人に助けを呼ぼうとしても、怖くて大きな声が出せなかった。

 そして、道行く人たちも、厄介ごとを避けるように、わたし達から遠くに離れてゆく。




 怖くて……悲しくて……すごく、後悔した。



 なのに。

 思わず流れてきた涙を、ふくことも出来なかった。

 半分突き飛ばされるように、誰もいない路地裏に押し込まれてしまったから。


 そして。


 ネクタイを緩め、にやけた、満足そうな顔のオジサンがわたしに抱きつこうとした。





 そのとき。






 後ろから、運命の声が聞こえた。