危険な瞳に恋してる

「……先生って、実は、良いところの……おぼっちゃん……?」



 ぶふふふっ!



「おぼっ……っ! なんだ、それ」

 村崎先生は、わたしの言葉にお茶を吹きかけた。

「旧家の出かって言われれば、そうだが……坊ちゃんなんて、もう十年以上は呼ばれてない」

「やっぱり、おぼっちゃん、だ。
 お金持ち? いいなぁ」

 いくら、ホストとは言ったって、百万円をぽん、と出せるんだもの。

 とてもすごい家に違いない。

 先生は、カップを置くと、参ったな、と頭を掻いた。

「シキタリばかりが多い、窮屈な家だ。
 特に、いいことはないぞ。
 歴史だけはムダに長いから、それをヒトに教えられるくらいで」

「……だから、日本史の先生をしているの?」

「……まあな」

 先生は、黒い瞳をすっと細めた。

「それに……ホストをしていると、泣く奴がいたから……」

「……え?」

 そ、それって。

「泣くヒトって、親、とか……?」

「……オレはガキか?
 あんたと話をしていると、調子狂うぜ」

 村崎先生は、紫音と中間の顔で睨んだ。

「……昔、好きな女がいた。
 そいつが、だ」