危険な瞳に恋してる

 相変わらず、静かな。

 決して、大声ではなかったけれども。

 たった一言でも、お腹にずしん、とくる村崎先生の声に、辺りの雰囲気が一変した。

 しびれたように、動かなくなった加藤先輩を無視して、村崎先生は、まっすぐわたしの方に来る。

 真昼の、太陽の下で見る先生の瞳は、紫色には見えなかった。

 だけど。

 その、日本人では当たり前の、黒い瞳が明らかに怒り狂っている。

 外見は、いつもの村崎先生だったけれども。

 中身は紫音、だった。

 虎が威嚇する時のように咽を鳴らすと。

 腕を押さえ込んでいた男子生徒から、乱暴にわたしをもぎ離して、自分の来ていた上着をかける。

「みんなで遊んでいたのに、サイテー」

 女子生徒の誰かが、小声で言った言葉に、村崎先生は、ぎらり、と睨む。

「……お前達は、コレ、を遊びだと言うのか……?」

 ひっと、声を詰まらせた女子に代わって、ようやく我に返った加藤先輩が、口を挟んだ。

「ああ、遊びさ。決まってんだろ!」

 加藤先輩が、ヒステリックに叫んだ。

「俺の親父は、この学校の校長なんだからな!
 邪魔をしたら、親父に頼んで、おまえなんか、教師を辞めさせてやる!」