危険な瞳に恋してる

 


 ヒトは、いくつもの『顔』を持ち。

 その時々で『顔』を使い分ける。

 だけども、瞳の輝きだけは。

 どんな『顔』をしていても、決して変わらない。

 自分の演じるすべての顔を知っているからこそ。

 『瞳』は魅力的なのかもしれなかった。


 涙で濡れたように、輝く紫音の瞳は。

 不吉な色に侵食されていたけれど。

 それでも、なお。

 キレイだ、とわたしは思った。

 わたしをまっすぐに見てくれる瞳は。

 美しい、と思った。

 この何にも代えがたい、キレイな瞳は。

 外見が変わっているから、美しいのではない。

 強い意志と、優しい心と。

 そして。

 身を切り裂くかと思うほどの、悲しい思い出が混ざり合っているから。

 わたしの心を捉えて、離さないんだ……



 だからこそ、わたしは。


 紫音の危険な瞳に。

 ……恋をしてしまったのかもしれなかった……