危険な瞳に恋してる

 わたしのセリフにも紫音は、噛みついた。

「守屋は、加藤を選ぶのか……!?」

「違うわよ、紫音……!
 早く……先輩は、行って……!!」

「わ……判った!!」

 紫音の様子に、青ざめた、加藤先輩は。

 なんどもうなづくと、入って来た扉から、転がるように出て行った。


「………守屋。
 お前は、逃がさない……!」


 加藤先輩が、去った後の扉に、鍵を掛けて、紫音が微笑んだ。

 真紫の瞳を獣のように輝かせて。

 薬の熱に浮かされて。

 わたしを抱き寄せた手に、力がこもる。

「……守屋……
 守屋……!」

 紫音は。

 わたしを抱きしめ、ささやいた。

「忘れようとしたんだ……何もかも……
 由香里のことを……
 全て忘れてしまえれば、楽になると思ったのに……
 ……守屋を迎えにいけると思ったのに……
 携帯の写真を破棄したのに……
 薬も酒も浴びるほど呑んだのに……
 何の役にも、たちはしないんだ………」

「……紫音……!」

 なんて、なんて莫迦なことを……!

 わたしも、紫音を知ろうとして、軽はずみな事をしてしまったけれど。

 紫音も、また。

 わたしのために……

 大事な思い出を捨てようと……してくれたんだ。







 ……命を賭けて。