危険な瞳に恋してる

「紫音……?」

 離れて行く体温に不安を感じて。

 紫音にすがった手を。

 彼は、そっと離した。

「守屋が……あの金を……結納金だ、と言ってくれた事を聞いて嬉しかった。
 お前がオレのものになってくれるんだと思って……
 本当に……
 本当に、嬉しかったんだ……」

「……紫音……」 

「だけど……オレは。
 守屋を嫁には……
 ……できない……」

「なんでっ……!
 どうして!」

 叫ぶわたしに、紫音は、苦く微笑んだ。

「オレは薬にカラダを蝕まれた。
 お前とは、だいぶ年の離れた……男だ。」

「そんなこと、関係ないわ!」

 好きなら。

 好きでいてくれるなら……それで良いじゃない。

 紫音がいれば。

 紫音さえいれば。

 他に、何もいらないのに……

 わたしの叫び声に、紫音は。

 いつもは、ヒトの心を射抜くようにも見える、目を伏せた。

「……オレは、もう、教師じゃない。
 ホストを続けていけば。
 仕事の……女のコトで遠からず、お前を泣かす……
 それだけじゃない。
 ホストは辞められても、無理な事があるんだ。
 ……オレは……」

 言って、紫音は。

 苦しそうに、ため息をついた。