足音高く、立ち去って行く、アヤネさんは、病室を出ていった。

 その、悲しげにもみえる後ろ姿を見送って、薫ちゃんは、わたしに振り返った。

「春陽は……本当に、莫迦なコト、したわね?」

「……薫ちゃん……
 ごめんなさい……」

 涙が溢れて止まらない。

 ボロボロと落ちる涙をそのままに。

 わたしは、ずっと、薫ちゃんに謝っていた。

「ごめ………」

「うん。
 そうだね……
 でも、謝るのなら……
 春陽は、紫音に直接、謝らなくちゃ、ね?」



「……薫ちゃん」



「紫音は、由香里を亡くしているから……
 こんなベッドに……
 自分が好きだと思ってるコが寝ているのは本当に、耐えられないのよ……?
 警察に連れていかれるまでの間、ずっと……
 紫音は春陽ちゃんの足元に座っていたわ………
 目を赤く腫らせたままで………」

 薫ちゃんは、ため息をついた。

「紫音にとって、春陽が。
 元気いっぱいに笑っているコト以上に、大事なコトはないんだから……」