ホールで、ゴージャスな感じのお姉さんが、大きな花束で紫音の胸を叩いていた。

 泣きながら。

 紫音の胸に花束が当たるたびに、繊細な花は壊れ、砕ける。

 はらはらと舞い落ちる花びらに、シャンデリアの光が当たって、まるで……




 ……血が流れているようだった。




 紫音は、ただ黙って打たれていた。

 泣いている彼女の気のすむままに。

 バラの棘が、自分の頬を傷つけて、本当の血が流れてもぬぐおうともせずに、相手の瞳をまっすぐ見つめて。

 そして、ようやく。

 打ちたいだけ打って、気がすんだらしい。

 髪を乱して肩で吐息をついている彼女に、二言、三言、言葉をかけて近づくと……

 そのまま。

 紫音は、その口で彼女の唇に、触れた。

「あ……」

 ……遠くて、紫音の声さえ、聞こえなかったけれども。

 もしかすると、紫音に口づけられた彼女と、わたしの吐息が重なったかもしれなかった。