あ……でも。

 そんな事情だったなら、きっと。

「え……と、だったら。
 本当に『買った』わけではないのかも……」

 そうよね。

 だって、わたし……色気が無いって、振られたんだもの。

 大好きな、加藤先輩に。

「わたし、今日はじめてウリをやってみようと思って……でも、怖くてとっても無理で。
 オジサンに絡まれているところを、たまたま前から知っていた、せ……紫音……さんに助けてもらったんです。
 成り行きで、買ってもらったことにしているから、本気じゃないと思います。
 わたしも、貰ったお金はもちろん、返します」

 そう。

 百万円なんて、とんでもない。

「ふぅん」

 でも。

「それで、大事なお客さまをフッちゃうなんて、紫音ちゃんってば男前過ぎよね」

 薫ちゃんは、納得していないようだった。

「ウチのクラブ、この街で真面目に一、二を張れちゃうくらい売り上げがあるの。
 紫音ちゃんだって。
 この街にあるクラブ全部の中で、一番売れているホストだって言ってもいいわ。
 ゼロから、ここまでになったのは、今日の大事なお客様が出資してくれたからなのにね。
 お店にも。
 紫音ちゃん自身にも」

 薫ちゃんはふふっと笑った。

「もしかして、紫音ちゃん、春陽ちゃんのこと相当気に入っているのかな……?」