わたしの表情(かお)がよほど……最悪だったらしい。

 薫ちゃんは、慌てたように手を振った。

「ごめんなさい、あたし、別にウリが悪いって責めるつもりは無いのよ。
 ウチに来るお客さまの中にだって、ウリの子いるし。
 あたし達のお仕事だって、時には自分をウリに出す……お金を貰って女のヒトを抱いたり……する事もあるし。
 ただ……」

 薫ちゃんは、そっと肩をすくめた。

「紫音ちゃんって、今まで一度も……お金の絡まないセックスってしたって話、訊いた事無いから」

「え……え?」

 セ……セックス、なんていう過激な言葉をさらりと言われて、わたしは、薫ちゃんが言っている事が判らなかった。

「それって……どういう……?」

「紫音ちゃん。
 自分をウリに出す時にしか、女のヒトを抱かないの。
 しかも、自分をすッごく高く売っててね。
 気に入った相手でも最低、二、三十万。
 嫌いな相手になると、一晩で百万位は平気で請求するのよ?
 なのに、ほとんど毎晩、紫音ちゃんには、お客がつくのよねぇ……」

 薫ちゃんは、感心したように、しみじみと言った。

 な、なにそれ。

 信じられない。

 ……ホントにわたしの知らない世界の話だった。

「だから、紫音ちゃんが自分でお金を出して、女の子を買った、なんてちょっと……
 ……信じられなくって」