薫ちゃんは、驚いて言った。

「紫音ちゃん!
 一時間って……今日は、アヤネさまのお誕生日よん?
 もう、いらして紫音ちゃんをお待ちなのに……
 本当に、一時間で上がっちゃっていいの?
 アヤネさまは、ウチのお店の大切なスポンサーでしょう?
 怒らせちゃったら、大変よ?」

「アヤネの誕生日じゃなかったら、今日は、自主休業するつもりだったんだ。
 余計な拾いモノをしちまったからな」

 そう言って、紫音はわたしをちらりと睨んだ。

「それに。
 どうせ、アヤネはオレを独占指名するつもりだろう?
 独占指名は一晩に一人一回一時間まで、なんて莫迦なルールを作ったのは、アヤネ自身だ。
 指名されている時間だけ、アヤネの誕生日につき合えばお互いに、面目はたつんだろう?」

「ん、もう。
 そんなイケズな事言っていると、今度こそ、アヤネさまに嫌われるわよん?」

「まあ、フツーのホストだったらな」

 紫音は、ぎらり、と抜き身のナイフみたいに笑った。

「……オレは、違う」