「えっと、まだです……
 でも、朝用があるみたいで。
 もしかすると、少し遅れるかも……知れません」

 確か。

 この時間は、普段は、まだ。

 ダーク・クラウンのホールにいるって言ってたし……。

「用? こんなに朝早くから?
 ジョギングでもしてんのかな?
 いけないなぁ。
 大事なデートの時は、十分前には必ず来るように、って村崎には、教えていたのに。 少し速く来るのは、女の子の扱いの基本だよね。
 他にも、村崎には、こっそり昨日、色々教えといたんだ。
 デートの基本やら……洋服の選びかたも。
 だから、僕、村崎がどんな格好で来るのか楽しみで。
 まさか、いつもの服装では来ないよな……」

 しゃべる、しゃべる。

 聞いているだけで、疲れそうだ。

 なるほど。

 柴田は、嬉しそうに聞いているけど、紫音には、苦手なタイプかも。

 紫音と、宮下先生は正反対だ。

 それにしても……紫音に。

 街一番のホストに、女の子の扱いや服装選びをアドバイスしたって……本当に?

 わたしが、ふき出しそうになっているのも知らずに。

 あきらクンは、またしゃべる。

「まさか、遅刻する、なんてことは……
 もし、遅れても、春陽ちゃんも僕が面倒見てあげるから、大丈夫だよ。
 僕の中の一番の席は、萌で埋まっているけれど。
 二番目の席でよかったら、春陽ちゃんに開けておいて……いてててて」

 あきらクンは、怒った柴田に、力一杯つねられて、悲鳴をあげた。

「ほんっとうに、どーしょうもない、チャラ男よね。
 なんで、あたし、こんなヒト好きになっちゃったのかしら」