「あれは。
 忘れもしない、昨日の放課後だったわ……」

 柴田は、少し遠い目をして、カタりだした。

「陽が斜めにさす、部屋に。
 あたしは、彼を呼び出したの……
 告白、するために……!」

「きゃーっ、すてきっ!」

 わたしの合いの手に、柴田は、Vサインで応えた。

「なんで、呼び出されたか、知らない彼にあたしは、勇気を出して言ったのよ!
 今までずっと、好きでした。
 これから、付き合ってくださいって!!
 そしたら……」

 柴田は、ここで、一回言葉を切り、唾を飲み込んだ。

「僕も、ずっと前から萌のことを好きだった、って!
 僕のこの恋は。
 許されるはずも無い、禁断の恋だから。
 今までずっと心の中にしまってたんだ、ですって!!
 聞いた?
 禁断の恋よ。
 禁断の恋!!」

 わたしは、その時。

 すぐ隣の部屋に、紫音と一緒にいて聞いていたけど。

『禁断の恋』なんていう、どきどきするような言葉なんて、一言も出てなかったし。

 柴田のカタる、ハーレクィーンのロマンス、って言うよりは。

 どたばたコメディのようだった事を、知っていたけれど。

 今は、一切、そんなの関係なし!!

 だって、告白は成功したしっ!

 結果が、同じだったら、内容に『少し』ぐらい脚色があっても、良いよね?