「それに、今は。
 ……あんたが、あの学校の生徒でいる間は……
 あんたをおおやけに、紹介して、連れ歩くわけには行かないんだ。
 普段の日は、落ち着いて話一つできないなんて悲しすぎる……
 だから。
 バイトって形でもいい。
 ここで。
 オレの側にいて欲しいんだ」

 身勝手な頼みで、すまない、と。

 頼む紫音の瞳は真剣で。

 わたしは、思わず頷いてしまった。

「……わかった。
 わたしも。
 ……わたしも……
 ……紫音と一緒に居たいもの……」

 わたしの言葉に、紫音は嬉しそうな顔をした。

 目を閉じて、眠っている訳ではないのに。

 まるで、少年のような顔して。

 それを見て。

 ……必ず明日も。

 ううん。

 出来うる限り、なるべく多く紫音の側にいよう、とわたしは決めた。

 紫音の瞳が。

 辛い事を辛いままでいるのではなく。

 一歩一歩、前に進もうとしているように輝くのを感じたから。

 わたしが、出来る事は。

 やれることは、やってみよう、と思ったんだ。






 ……でも。


 それには、わたしにとって、ある意味、試練の始まりと言ってもいい。

 出来事の、はじまりだった。