危険な瞳に恋してる

 溢れて来た涙で、紫音の姿が、霞む。

 ぼやけたわたしの視界の中で。

 紫音は、紫色の目を見開いた。

 そして。

 わたしの手首を握りしめる力が強すぎたことに、やっと気がついたのか。

 慌てて、左手を離した。

「……守……屋……」

 自由になった手で、わたしは、紫音の頬に触れた。

「キレイで、怖い、不思議な、紫音……。
 助けてもらうまで、ちっとも気がつかなかったけれど……
 わたしは、今……
 紫音が誰よりも……好き」


「……!」


 紫音は、驚いたように言葉を詰めると。

 自分の頬にある、わたしの手に口づけた。

「ウリだから、資格無いなんて……!
 守屋の気持ちに気がつかなかった、なんて。
 オレは……とことん……莫迦な男だ」

 紫音の強い瞳の力が、すっと弱まった。

 泣いているような。

 微笑んでいるような表情(かお)をして。

 わたしの涙を、人差し指で拭く。

「そして、きっと。
 オレはこれから、世界一、幸せな男に………」