危険な瞳に恋してる

「……どうやったら……
 あんたに気づいてもらえるかばかり、考えたよ。
 あんたを手に入れるために……
 百回のキス……?
 それだけの数のキスをあんたにすれば、オレを好きになってくれるかも、なんて。
 莫迦莫迦しくて大笑いだ」

 紫音は、皮肉たっぷりに笑った。




 紫音が。




 そんなに……わたしを思ってくれてたなんて。




 わたしは、ちっとも知らなくて。




 驚いて。





 止まっていた涙がもう一度、溢れてきそうだった。



 ……なんだ。

 莫迦ね。

 わたし達。

 相手のコト。

 お互いに好きだったんじゃない。



 こんなにも、好きだったんじゃない!




「わたしも……好きよ?」

「……ウソをつけ」


 紫音の熱にあおられるように、わたしは呟いた。

「本当よ……わたしも紫音のコト、好き……
 でも、わたし、ただ、お金で買われたウリのコだから……
 イヤだった……
 紫音のコト、好きになる資格、無くて 悲し………」



 ダメ……わたし……泣いちゃう。

 両手首を掴まれたまま。

 わたしの目から涙が溢れて。


 ……止まらなくなった。