危険な瞳に恋してる

 長いキスを終えると、紫音は鋭く囁いた。

「……オレは、莫迦だ……!
 こんな……!
 年の離れたガキに、本気になるなんて!
 一瞬でも由香里を忘れて、こいつを好きになるなんて……!
 あんな薄汚い猫と、自分を重ねあわすなんて本当に、どうかしている……!」

 キスは、わたしの唇を離れて、首筋に降って来る。

 跡になりそうなほど強く肌を吸われて、思わず身体が反り返った。

「……昨日の出会いが、偶然だと思ったか?
 そんな都合のいいコトが、あるものか……!
 オレは、あんたのことを見てたんだよ。
 あの雨の日から、ずっと……
 ずっと……!」

 紫音は、わたしの両手を左手だけで一まとめに掴みなおすと、右手をベッドに打ちつけた。

「いつだって女の切れた事のない、ホストの『紫音』がストーカーか?
 しかも、このオレが、女を買うなんて……!
 それでも。
 プライドも、何もかも捨てても、あんたが欲しかったんだ!」



 静かな。

 炎のような叫びだった。