危険な瞳に恋してる

「紫音……!」

 けれども。

 紫音は、薫ちゃんの声を完全に無視した。

 紫音が扉を閉める手がとまらない事を知って、薫ちゃんが、わたしに、叫ぶ。

「春陽! 嫌だったら、思い切り抵抗しろ!
 いつもだったら、この時間は、紫音の限界時間だ!
 あと、五分か、十分で、紫音は動けなく……」

 薫ちゃんのセリフの途中で、部屋の扉が閉ざされ……

 カチッと小さな音が響いた。

 紫音が扉を完全に閉めて、鍵をかけたんだ。

 そのとたん。

 防音の良く効いた部屋はしん、と静かになった。




「……限界時間?」



 一歩一歩近づいて来る紫音の迫力に、気圧されて。

 壁に張り付くように、逃げながら、わたしは聞いた。

「……薫のたわごとだ。
 関係ない」




 紫色の瞳が、鋭さを増した。