危険な瞳に恋してる

「やめろ、紫音……!
 目を覚ませ!!
 由香里は……!
 お前が愛した女は、もういないんだ!!」

「………っ!」

 薫ちゃんの言葉に、紫音は一瞬凍ったように立ち尽くし。

 恐ろしいほど、静かな声を出した。

「……だから、なんだ?」

 紫音が囁く。

「逝ってしまったから、なんだと言うんだ……!」




 紫音の声は、静かでも鋭く……

 ……ものすごく怒っているのがわかる……のに。



 紫色の瞳は……泣いていた。

 一滴も、涙を流さずに。

 泣いているように見えて。





 わたしも、薫ちゃんも紫音に触るコトが出来なかった。



 紫音は。




 動けないでいる薫ちゃんを振り切り。

 抵抗を忘れたわたしを引っ張って行くと、仮眠室に使っているらしい部屋に、放り込む。

「あ……っ!」

 乱暴に押された勢いで。

 わたしは、部屋のソファベッドにつまずいて、よろめいた。

 その時になってようやく。

 薫ちゃんの呪縛が解けたように扉へ駆け寄った。