不意に、夜風に冷やされて冷たくなっていたコートが温かくなった。
抱きしめられてる、と理解するまでかかった時間、およそ5秒。
「……もう、嫌?」
わからない。
自分で買った喧嘩。もう嫌なの?確かに人殺しは嫌だ。
だけど、だけどね。
「……続けます」
どうしてなのかは自分でもわからない。
「……うん、わかった」
ルカさんは更にぎゅっと抱きしめてきた。今はこの温もりが恋しい。
なんて、都合がいい私が嫌い。
「ねぇ、一葉ちゃん。覚えてるかな」
「何をですか?」
「僕は一葉ちゃんが好きだよ。どうしようもないくらい好きなんだ」
ルカさんは少し離れて、私の額にキスを落とす。次に頬、瞼。
流石に口にはしてこない。安心してる反面、どこか淋しい気がした。
……何で!!?
「覚えていて下さい。僕が君を愛しているということを」
「……はい」
というか、そんなの忘れる筈ないと思う。


