廊下を歩いていくと、小さな足音が聞こえた。荻南さんかな、黒羽くんかな。
「一葉ちゃーんっ、怪我はない!?」
荻南さんだ。
窓から差し込む月明かりに照らされた荻南さんの顔は、赤。頬に擦り傷がある。
「あっ、三月ちゃん、また怪我してるじゃないですかっ。全くもう……」
「えへへ、大丈夫大丈夫。今回はほっぺだけだから。で、一葉ちゃん怪我は?」
「大丈夫です」
「良かった〜」
「黒羽くんはどうしました?」
「黒羽ならたぶん後ろの方でゆっくり歩いてると思うよ」
ふぅん……。
「ふふ、一葉ちゃんにはどんな呼び名が与えられるのかな」
「……現場を見てないのに、決められるものなんですか?」
「女王様の小型飛行カメラが一部始終を監視してるらしいよ、ゲームの時は」
……つまり全部見られてたわけか。な、何か恥ずかしい!!
「ま、無事終わったわけだし、帰ろうか」
「そうですね」
私達は家路を辿って帰り道を行く。
ルカさんの手はやっぱり大きくて温かくて優しくて、月が変に歪んで見えたのは何故だろう。
私は泣いてるの?


