「……ェェェェェェェェ」
遠くから何か聞こえる。何か叫んでるみたいだけど、何を言ってるのかわからない。
「チッ……。相変わらずの地獄耳……」
え、えっ?
ルカさんが何か黒くなってる。ルカさんの舌打ちなんて初めて聞いた。何か新鮮。
「……メェェェェェェェェ!」
……ん?
ヤギ?いや、羊?
近付いてきてる。近付いてきてる。確実にというしかないくらい確実に近付いてきてる。
「一葉ちゃん、戦える?」
「……っ、やってみます」
「テンメェェェェェェェェェ!!」
声はもうすぐ近くまで来ていた。実戦、というか私の初陣。
「テンメェ、二重領域《ダブルサイド》!!よくもこの俺をゴリラ扱いしやがったな!!」
現れた人物の顔は、確かにゴリラに似ていた。成る程、成る程。
「嫌ですね、ゴリしか言ってないじゃないですか。自意識過剰ですね」
「そこまで言ったんなら誰だってわかるわ!!そこのチビも頷いてんじゃねぇよっ!!」
え、私?
「何意外そうな顔してんだ、いちいち腹立つ奴らだなオイっ」


