「さて、そろそろ出てきたらどうです?」
えっ?
私は周りを見渡すけど、誰もいない。
「……ふん、隣の馬鹿は気付いていなかったみたいだな」
前方から、黒羽くんがスッと現れた。い、今までどこにいたの!?
「黒羽ーっ、待って、置いていかないでっ」
更に前の方から荻南さんの元気な声も聞こえる。本当にこの二人のことだったんだ。
「あ、一葉ちゃん。手を繋いでる……。ホントだ、心配いらなかったんだね」
心配って……。何の心配だろう。
「覚悟は出来てるのか?」
黒羽くんの冷たい声は、私を、現実の世界にいると思い知らす。
「……出来てる、って言ったら嘘になる。中途半端が一番ダメなのは知ってるけど、私……」
どうしても、この恐怖は拭いきれない。
怖い。


