誘拐犯と人生ゲーム




「ここにいますよ」



「……ぇ?」



ルカさんは未だに涙をポタポタ流しながら、私を見る。



「私、ルカさんに誘拐して下さいって頼みましたし。ルカさんだって良識的な人間じゃないって自分で言いました。



その実態が判明した途端嫌うなんて、私しませんよ。


ここにいるって言いましたしね。自分が言ったことを撤回するつもりはありません。


私は変わらずここにいます。ルカさんの傍にいます。



ね、ルカさん。



まだまだ全然とはいえ、ルカさんのこと、多少は人間として好きですからね」



そう、人間。あくまでも人間として。



「い、一葉ちゃん……」



ふと気になって時計を見ると、時刻は午前11時30分。



……ルカさん、この1時間後に大学だよね。お、お昼!お昼急いで作らないと!