「目が覚めたみたいだね」
知らない人の声がした。振り向くと、白衣姿の男性がそこにいる。優しげな笑みを湛えて。
灰色の髪、黒い瞳、白衣、男性(いや、青年だな)。
「怖がらないで。えっとね、簡潔に言えば、僕は君を誘拐した」
……What?
「何故かはわからないけど、君を誘拐したくなったんだ。だから誘拐されてほしいな」
人差し指と人差し指を合わせ、首を傾げながら可愛くお願いする青年さん。
いやいや、それで「はい」と答える人はいないんじゃない?
でもまぁ、
「いいですよ」
私も何故か、別にいっかなみたいな感じになって、了解した。