「この匂い、嫌いですか?」
「血の匂いは……、わかりません」
薬品はともかく。
でもお医者さんだし、手術とかするよね、きっと。そしたら仕方ない匂いだよね。
「……僕は、一葉ちゃんが思ってるような、良識的な人間じゃないよ」
「闇医者さんが良識的な人間だとは考えにくいですね。第一誘拐犯ですし」
「それもそうですけど……。そういうことじゃなく」
「自分をあんまり信用するなって言いたいんですか?」
だとしたら哀しいね。
「……哀しい、な」
ルカさんが淋しそうに呟いた。それは肯定の言葉だろうか。
「ねぇルカさん」
私は、
「私は、ここにいますよ」
「……うん」


