「じゃぁな」 彼女はフッと笑って、踵を返した。 千秋が空木に一礼して、その後を追う。 「んじゃ、俺も行くわ」 「うん、淋のこと頼むね」 彼はまるで、どこかのサラリーマンの男を送り出す女のような口調で言った。 ドラマとかでよくあるじゃん。 あーゆーの。 そして空木は、これからどこへ行くのか、とか。 どうするのか、とか。 そんなことは聞いてこなかった。 俺は走って淋の背中を追った。