***** 風が、吹いている。 少しひんやりとした風だ。 目を開けて、まず視界に入ったのは、見たことのある景色だった。 ――ここは…… 『起きてるー?』 隣から、ムスッとしたような声がした。 嗚呼、この声は―― 『木の上で寝たら風邪ひくよ』 彼が私の肩をひいて、目が合うようにさせる。 『あ、起きてた』 キョトンとした藺草さんだった。