「返事をめんどくさがる癖を何とかしなければ――」
彼女は、話を聞かない。必要最低限のことしか言ってくれない人は、こちらの話も半分ぐらいしか聞かないのだ。
思いながら、ふと、あることに気付いた。
「なんで……」
アガトには、“その他大勢”がいると言っていないのか。
今までの奴らとの違いがそれだ。少なくともそいつらは、自分の立場が分かっていたからこそ、一番たるノエマに刃向かってきたというのに、アガトは違う。
シキミの唯一。
複数いると知らないならば、一番(ノエマ)がいたことも知らない。
アガトが自分を殺そうとした意味。それは単に、女を寝取られたと思う男の憤りにせよ、“どうして知った”。


