言いながら、ノエマは、ネクタイを緩め、故郷たるこの夕暮れで止まった世界の空気を大きく吸う。
「聞こえないのか、汚点。ふっ、耳まで腐るか。また体に傷でも負えば、貴様は逃げるように去るのかね」
一拍分の猶予を与えたというのに、まだ視界から消えない汚点――アガトに対して、ノエマの失笑は嘲笑に変わる。
思い出し笑いにも近い。
「痛め付け、罵られるのが希望か?今は私一人しかいないが、せっかくだ、昔のように一族総出で――いや、第七の奴らも招き、私たち純血種(高等種)で、貴様と“鬼ごっこ”でもしようか。
特に貴様は、逃げるのが上手いからな。ついで、捕まった後でもよく楽しませてくれる。お前ほど、汚点らしい奴はいないよ。見ているだけで、痛め付けたくなる」
悪魔を傷つけても、罪にはならない。
ならば悪魔同士が傷つけ合うには、更に下を叩けば良いのだ。


