俺にはシキミしかいない。それが如実に伝わるのが、今この時。
裏切られた、騙された。別の男とも一夜を過ごす女だなんて、最低の部類に入るはずなのに――嫌いに、なれない。
許せない、憎い。
それがないとは言わないが、それ以上の『愛している』が、アガトを抑制する。
「憎むな……!」
愛する彼女が、死んでしまう。
忘れたわけではない自身の能力。
憎い奴を殺してしまう。それの範囲がどこまでか――別世界の彼女にまで及ぶだなんて思わないが、それでも殺したくないとアガトは、いつもの彼女を思い出す。
恋人同士の日々。
あれに偽りなんかない。
愛していると言われ、愛していると言った。
愛したいと抱かれ、愛していたいと抱いた。


