くだけた別れの挨拶を最後に、オドエーヌの姿ごと、世界が消える。
瞬きほどの間。
俯いたままでも、自分がもといた世界に帰って来たことは分かった。
もとの世界。そこでルビーを握りしめていた手がいつの間にか開いていたのを知る。
彼女に渡すはずだったもの。どこかに落としたのなら、探すなりするべきだが。
「……、苦しい」
息が、できない。
そんなはずはない、帰ってきたのならば不調などすぐに治り、また活動できるというのに。
「……」
ああ、駄目だ。
足から力が抜けて、近場にあった大木に寄りかかった。
腕をつけ、ずるずると沈むように落ちていく。
何も考えたくない放心状態にも関わらず、頭は先ほどから、シキミの顔しか映さない。
いつもの笑顔。
そうして、知らない男と寝ていた顔。
目に、焼き付いてしまった。


