(二)
死に物狂いだった。
時間が経つにつれ、呼吸が浅くなり、代わりに肺を膨らます空気が体に害をもたらす。
人間とて、地上から山に登れば体調を崩し、時には死に至ることもあるのだ。アガトの症状はそれと同格だったか。
他所から来たものに、世界は優しくない。この場所で生きるには不適合と排除されようとしていた。
「はあ、くぅ……っ」
意識が遠退く。歯を噛み締めて堪えた。
息ができなく辛い。けれどもアガトが一度も休まなかったのは。
「シキ、ミ……!」
脳裏にある彼女が微笑んでいてくれたから。
いつものように。
きっと君は、俺を待ってくれている。
「呼ん、で……!」
行くから。
真っ先に駆けつけて、君を愛してみせるから。


