耳さえもあるか分からない相手でも、自身の声に鼻がぴくりと反応したのをアガトは見逃さなかった。
「お前が飲み込んだルビーが欲しい」
前提としての話。
知らぬなら知らぬと言ってくれればいいが、デウムスは口を開けた。
返事をするわけではない、ましてや、アガトの用件を聞き受けたわけでもなく。
「自分で、“取ってこい”か」
腹の中で探してこい。確かにそれならアガトはルビーを手にすることもできるだろうが。
「行っちゃダメっすよ、ダンナ!入ったら出られませんから!」
虎穴に入らずんば、だが、洞窟めいた口の先は死地に通じている。
胃液で溶かされ、奴の血肉に。宝石の類いならまだ残っているだろうが、生身の己が無事なんて賭ける気もなかった。


