「一族の汚点みたいなものだから」
知らずと握った拳。爪が手のひらを抉っていた。
『人間じゃないんだろうか』、そう思ったのは彼女と同じであったら良いなと単なる妄想にしても、自分が悪魔らしからぬからこそ言えることでもあった。
誉れある一族でありながらも、功績はなく。己が力で誰かを殺せたことなどない。
だからこそ、別世界の召喚師から力を分け与えられる方法に目をつけたわけだが――今では目的が、がらりと変わっている。
「え、えー、倒さないんっすか。ダンナならいけますってぇ」
立ち上がるアガトについていくインプはなおも言うが、アガトは見向きもしなかった。
「遠慮する。やる意味がない」
強くなってもならなくても、シキミは俺を愛してくれているから――
「今までいっぱい殺してきたんっすよねっ。なら、ここもそのついでで、いっちょ、かるーく、ね?ね?あの脂肪の好物、ぜってーインプっすから!」


