「それを盗まれるあなたって、ほんと、間抜けですね」


「人は睡魔には勝てないのよん」


大切なルビーを懐にしまい、男はカップに手をつけた。


「いやぁ、でも助かったん。盗まれ、しかも別世界に行ったとまでなら、まだ簡単に取り戻せたんだけどん。デウムスに食べられたと知ったときは、ワタクシしばらく泣いちゃってたよん」


「あなたなら、デウムス倒せる召喚物なりを従えていそうですがね」


「いやいやん、骨が折れんのよーん。強い奴ほど呼び出す労力がパナいだけじゃなく、命令するにも代わりに何か寄越せな現金ちゃんなもんだからさん。

頼んで良かったよん、絶倫の魔女に」


紅茶で妥協したのか、いざ飲もうとする前に、シキミがカップの底を叩いた。