「俺はシキミにとって“その他大勢”でしかないって、こいつが……!」
憤怒の表情をもって、アガトは落ちた肉片を踏み締めた。
「シキミは、俺の恋人なのにっ、勘違いを……っ、思い上がって、自惚れて!こいつはずっと、シキミに愛を語っていたんだ!」
肉片が更に細かく。乱切りから微塵切り。
憎めば傷つけるその思念は、消えることを知らなかった。
「アガト」
だからこそ、シキミは呼ぶ。
「ほら、また汚れましたよ」
不出来な子供でもたしなめるような笑みに、アガトの頬に触れる指先。
どこまでも優しい。
何よりも愛しい。
「シキミ、俺……!」
なのに、苦しかった。


